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株式会社NCC

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低温イオンプレーティングのリーディングカンパニー

ものづくりのまち、福井県鯖江市にある株式会社NCC様は、唯一無二の着色技術を持つ企業様です。特徴でもあるイオンプレーティングについてや株式会社NCC様の歴史的経緯などを、代表取締役社長の下内 孝博 様にお聞きしました。

低温イオンプレーティングの特徴について

我々のコーティング加工は、金属を加工するということが使い道の原点です。そこから派生してプラスチックやガラス、陶磁器につけるようになりました。
中でも、ガラスに加工をしたものなどは見た目の価値が結構変わります。例えば、ステンレスのポットに色をつけたものをコーヒーショップ向けに作りましたが、その際、「色がついていてかわいいから。」という理由でコーヒーを注文する方が非常に増えたそうなんです。そこでメーカーがコンパクトにして販売を始めました。その中で出てきたものがガラスポットに着色した製品です。
また、先方から持ち込まれて、小浜市で作られている若狭塗箸に色をつけたこともあります。

このように、対象物を選ばないというのが、この加工技術の特徴です。

NASAから始まったコーティング技術

イオンプレーティングとは、プラズマにより金属が蒸発して周囲の反応性ガスと反応・化合して被加工物に蒸着させる技術のことをいい、宇宙開発技術の一環として、アメリカのNASAが研究を始めたものが元となっています。
当初は、一般の民間企業には縁のない技術であると思われていましたが、ハードコート、すなわち、「製品本来の性能を損なうことなく、表面を、傷や汚れから守るためのコーティング」という意味合いで世の中に普及いたしました。
刃物であれば長時間研磨なしで使えるようになりますし、金型の摩耗が防げるようになるということで、需要が世界中で高まったわけです。

そこで、イオンプレーティングをする事業所が世界中に立地しました。日本にも、イオンプレーティング事業を行っている会社がたくさん存在します。
ただ、イオンプレーティングに最初に用いられた膜は『窒化チタン』という、チタンと窒素を反応させている金色の膜でした。この会社の原点は、眼鏡フレームのカラーリングでしたから、金色だけでは顧客の要望に応えられないということで、いろいろな色が出るように研究をしました。
その技術を地場で公開したところ、ここ鯖江にカラー皮膜の装飾加工技術が一気に集積したわけです。

唯一無二の着色技術とセラミック化

我々の技術には特筆すべき特徴が2つあります。
まず、着色技術。着色技術としては、他に比較するものがない技術になっています。絵の具のような豊富なカラーリングが可能なわけではありませんが、メタリックのカラーでこのような着色ができるのは、我々の技術だけですので、それが一つの特徴です。
もう1つは、セラミック化できるということです。セラミック化されることで、コーティングされた物が非常に硬くなり、耐摩耗性も上がります。さらに耐熱性も出るのでポットにも使用することができるようになります。普通の塗料ですと、熱をかけすぎると変色してしまい、最終的には全てが茶色になってしまいます。それが、我々の技術によれば、変色することもないですし、かなりの高温にも耐えられるので、車のマフラーのカラーリングなどにも使われています。

会社設立の経緯

最初は眼鏡フレーム事業から

うちは元々眼鏡フレームメーカーの表面処理事業から独立してスタートした会社です。しかし眼鏡フレーム事業をしていた時は、眼鏡を集めるためには鯖江の中での競争に勝つしかない。ということで、すぐに過当競争の時代がやって来ました。そこで、眼鏡以外の加工を獲得しようと考え、色々な業種に目を向けて、沢山の業種から仕事を受けるようになりました。
イオンプレーティングは設備費用が非常に高いため、その設備費用に見合うリターンを得ようとすると、色々なことをやらなければいけない環境だったわけです。
一方で、眼鏡フレームのメーカーが眼鏡以外の事業にこんなに高額の資金を連続して使うことが良いのかという考え方も出てきました。

会社設立のきっかけ

その結果、スタートして15年ほどで眼鏡フレームの表面処理事業はたたむことになりました。しかし、当時、加工していた業種の内訳が、眼鏡フレームは15%ほどで、残りの85%は眼鏡以外の事業でしたので、その残りの85%の業者の方から「やめないでくれ」との声をたくさんいただきました。それで、何らかの形で継続していかないといけないということで、眼鏡フレーム事業以外を引き継ぐ形で独立して作ったのがこの会社です。

低温処理技術の早期確立

イオンプレーティングの業者は全国に300社程度あるということですが、実際にカラーリングをする業者は10社足らずしかありません。その中でもうちの特徴は、非常に低温で処理ができる技術を早期に確立したことにあります。そのため、プラスチックに加工ができる世界で最初の業者となりました。今でも競合社は現れておらず、プラスチックの加工品をイオンプレーティングする場合は、我々か、もしくは我々が技術を共有しているパートナー会社のところに仕事がいく形になっています。

機械を作るまでの歴史

眼鏡フレームの会社にいた時代の、この事業のスタート段階での設備は、ドイツ製で、非常に高価な機械でした。しかし、タイミングや、社長の潔い決断があり、なんとか入手することができました。ただ、ドイツと日本ではあまりにも距離があり、国民性の違いもあって、トラブルが発生した時の対処を、日本のように丁寧にはやってくれないという問題点がありました。そこで、自分たちで何とかするしかない!と、少なくともメンテナンスは自前でできるだけの力を短期間で身につけることができました。
これが今の低温イオンプレーティング技術に直接つながったというわけではありませんが、このイオンプレーティングの技術が、三十数年前は非常に少なかったため、韓国のお客様からのコーティング注文というビジネスも存在していました。

ところが、このビジネスは、輸入の段階と輸出の段階で、見た目が変わってしまいます。そのため輸入品と輸出品が同じであることを証明できないと、輸出入の税金を払わなければならないという問題が発生してしまいました。そうならないために保税をかけるという方法もありましたが、それも非常に手間がかかります。
輸出入で税金がかかってしまうと、どうしても料金が上がってしまうため、オーナーから海外の事業はやめるように言われてしまいました。

しかし、相手先が「それでは困る」ということで、韓国に機械を導入して指導をすることになりました。ただ、ドイツの機械は非常に高価で買えません。そんな時、ドイツのメーカーにいた韓国人エンジニアが、韓国に帰って真空の会社を起こすという情報を手に入れました。そこでそのエンジニアに「なんとかオリジナルに近い機械を特許に抵触しない形で作れないか」と言って作ってもらったのが始まりです。それが、今作っている機械の原点になっています。

機械の強み

我々は設備業者でも機械メーカーでもありませんが、加工した物の結果を見て、同じことをやりたいという会社はどうしても出てきます。しかし、この加工ができる設備はそれほど存在していません。
ですから我々がやりやすいように作り上げた機械をそのまま提供することで、短時間で我々と同じ加工ができるようになるというメリットがあります。また機械と一緒にノウハウもセットで共有できるという点が、他の大手企業にはない強みですね。
機械としての精度や評価の部分を測ると、うちの機械が特別高いというわけではありませんが、お客さまの視点で作って、ノウハウも併せて提供していますので、購入されたところは早くて1週間で事業をスタートすることができます。
元々、機械を売るつもりは無かったのですが、ある企業が他の国でそれを見て、勝手に作らせて、売ってしまったということがあるんです。それ以降、日本を含め、韓国以外の国での販売権は我々が完全に持つことにしています。
また、前述した韓国の会社に関しては、変転していく中で、我々と共同で作った会社を作り、設備の製造を請け負う会社になっています。

“無公害メッキ”

イオンプレーティングが普通のメッキと違うのは、金属とガスを反応させてできたセラミックが、真空中を飛ぶ際のエネルギーを使ってコーティングする技術ですので、電気的引き合いが必要ないという点にあります。ですから、電気の流れないものにも付けることが可能です。
原料は、金属はチタン、ガスは窒素と酸素と炭素という、どれも害のないものを使用しています。反応してついたものは品物に付いて、残りは装置の中に付きますし、装置の中に付いた物はショットブラストという方法で落とすのですが、できたものはただのセラミックの粉ですから、全く無害です。そのため、普通のメッキのように環境汚染の心配が全く無いというところから、無公害メッキという言われ方をしています 。

これからの展望

実は福井の企業と台湾の企業とのマッチングをする中で、こういった事業をやりたいという会社が現れまして、合弁会社を作りました。彼らの目的はコーティングビジネスをやることではなく、我々が作った設備を東南アジアに向けて販売することです。、しかし、それではアフターサービスやメンテナンスを我々の方で行わなければならず、それだけの人手はありません。
そこで、我々の設備を自前で持ってもらい、同じようなコーティングビジネスをやってもらうことで、設備やノウハウを理解しつつ、台湾から外に売ってもらうという形をとることにしました。将来的には東南アジアにこの設備を販売しながら、イオンプレーティングが普遍技術として全体に普及するように推進をしていきたいと考えています。


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