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大分かぼす

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全国の柑橘「カボス」の生産量9割以上を占める

今回は、大分県臼杵市内に樹齢300年の古木も存在していた「大分かぼす」をご紹介します。

大分かぼすの歴史

かぼすは、大分県の特産果樹で、古くから竹田や臼杵地方の民家の庭先に薬用として植栽されていました。臼杵市乙見地区に残る言い伝えによると、江戸時代に宗玄という医師が京都から持ち帰った苗木を植えたのがはじまりとされています。ダイダイの古名「カブス」と発音が似ているため混同されていますが、ダイダイとは全く異なる品種です。貝原益軒の養生訓には「皮をいぶして蚊いぶしとしたことからカブスとなった」とされていますが、これはダイダイのことでカボスのことではありません。「カボス」の記述が文献等に初めて登場するのは戦後しばらくたってからの、昭和中期です。しかし、臼杵市内には樹齢300年といわれる古木が存在していましたし、現在も樹齢200年前後の古木が数本点在しています。他県にはこのような古いカボスの樹は見られないことから大分県が原産と思われます。

食酢や薬用として庭先に植えられていましたが、大分県が栽培を奨励し、急速に新植され、産地化されはじめたのは昭和40年代からです。昭和47年に、県と農業団体、市町村、生産者による「大分県カボス振興協議会」が設立され、力を合わせた消費拡大活動が始まりました。昭和48年には、出荷の前進化のため臼杵市で試験的にハウス栽培が行われ、竹田市ではかぼす加工品の開発・販売が開始された。昭和50年代後半から、産地の貯蔵・選果・ハウスなどの施設や、種無し・晩生品種の導入等で生産ならびに出荷の体制が整いました。昭和62年には、かぼす独自の貯蔵法を開発し、飛躍的に貯蔵期間が延長されるとともに、貯蔵専用系統「豊のみどり」の普及により、グリーンかぼすの周年供給体系が確立しました。平成に入り、銘柄を「大分かぼす」に統一し、現在に至るまで、グリーンかぼすの周年出荷を行っています。

大分かぼすの特徴

かぼすは、生産量の9割以上が大分産です。クエン酸とビタミンCがたっぷりの果汁とさわやかな香りが自慢の逸品です。かぼすは、香酸柑橘類の中でも酸味が強すぎないので食材の味を酸味で消すことがなく、またミネラル由来の塩味・苦味・甘味が相対的に高いため、焼き魚や鶏肉、牛肉等の素材の味わいを引き立たせるような料理に使うことにより、素材の味わいとの調和が活かされると考えられます。また、ミネラル分としての塩味がしっかりとしていることから、食材に塩を添加する代わりにかぼすを添加することにより減塩効果が期待されます(味香り戦略研究所 調査結果より)。

 クエン酸、ビタミンCなどを含むカボスは、私たちの健康を維持するのに大変利用価値のある食品です。例えば、かぼすに含まれるクエン酸は胃液の分泌を正常にしてくれるので、胃弱の人や食欲不振のときなどに効果的で、風邪を引き始めたときもかぼすのビタミンCが威力を発揮します。その他に筋肉中に蓄積された乳酸によって生じる疲れの肩こりや頭痛もクエン酸をたっぷり摂ることによって、ぐっと楽になってきます。においに対する感覚は五感の中で最も鋭敏で、情緒に密接に結びついているといわれます。やわらかくて懐かしい香りやにおいは心を落ち着かせ、安らぎを与えてくれます。中でもかぼすなどの柑橘類はいきいきとしたフレッシュな香りで多くの人に好まれています。また、料理においてのカボス酢は素材のもつ香りを完全に覆ってしまうのではなく、各素材を十分に活かす脇役として活躍しています。

果実としての甘味が豊富で、酸味・ミネラルバランスにより食材に味わいの輪郭をつけるのが大分かぼすの魅力です。大分県産かぼすは、酸味・甘味とミネラルバランスの 調和が他の香酸柑橘類とは違います。かぼすは、香酸柑橘類の中では酸味が低く、食材の味を酸味が消すことがないため、焼き魚や鶏肉、豊後牛等の素材の味わいを引き立たせるような料理に使うことにより、素材の味わいとの調和が活かされると考えられます。また、ミネラル分としての塩味がしっかりしていることから、食材に塩を添加する代わりにかぼすを添加することにより、減塩効果が期待されます。一方、ゆず・すだち・海外産レモンは味のバランスだけだとよく似ているため、それぞれの特徴が香りによるものであると考えられ、国産レモンはカボスに似ていますが、酸味がかなり強めであることが分かります。味覚センサーで測定した結果、大分県産カボスは、他の柑橘類と比較して、酸味のほどよいバランスと高い甘味に特徴があることが分かりました。( 味香り戦略研究所・2006/8-10月調べ )

大分かぼすの栽培について

品種は、大分県内で栽培されたかぼすで、県が奨励する系統を使用することとしています。
かぼすは柑橘類の中では枝梢の懐に結果する性質(内成性)が強いため、樹冠内部まで日が差す樹形とします。体質の強い果実を生産するため、果実によく日を当て、葉かげ果ができるだけ少なくなる樹形にします。

摘果は生理落果の終わる時期に行い、着果過多とならないようにします。果汁量の多い良質なかぼすを消費者へ提供するため、収穫は果汁歩合が概ね20%以上になると見込まれる時期とします。この時期を設定するにあたっては、県、農業団体が大分県内で気象・立地等により生育の早い産地と遅い産地からサンプルを採取し、果汁量を測定します。大分県独自の蓄積データから果汁歩合を予測し、県内全域で果汁歩合が概ね20%以上となるであろう日を出荷適正日として設定します。ハウス栽培についても、同様に出荷適正日を設定します。

収穫後すぐに出荷せず貯蔵する場合には、県が推奨する栽培マニュアルを参考に、果実の緑色、果汁歩合等の品質を保つように貯蔵を実施します。出荷に際しては、果実の色、形状、傷等について、「大分かぼす」出荷マニュアルに基づき確認しており、品質の基準を一定に保っています。

大分かぼすの普及について

かぼすは、古くは薬用として重宝されていたが、「大分かぼす」が調味料に適する柑橘として高く評価されたのは近年のことで、昭和40年代に大分県が栽培を奨励することによって、面積が急速に拡大していきました。昭和54年には、当時の平松大分県知事が「一村一品運動」を提唱し、元来大分県内にて栽培されていたかぼすは、その旗手として各種イベントにて大分県の特産品として脚光を浴びるようになり、大分県カボス振興協議会では、大都市圏や地元において消費拡大活動を継続して行い、ブランド価値の向上に努めてきました。

農林水産省の特産果樹生産動態等調査においても、昭和53年以降、大分県は常にかぼすの全国生産量の90%以上を占めており、大分県では、他産地に類を見ないかぼす振興を行ってきていると言えます。その過程で、県外でも需要を開拓し、出荷されるようになった「大分かぼす」は、拡大する需要に応えるため、ハウス栽培の導入、貯蔵用品種の増産、貯蔵技術の開発といった周年出荷に向けた技術の開発・向上を行い、グリーンかぼすとしての周年供給体系を確立しました。このような、産地をあげての出荷体制の構築は、長年かぼすを県の特産品として位置づけ、販売を行ってきた大分県ならではのものです。

また、果汁調査の結果から出荷される果実の果汁歩合が概ね20%以上となるよう「大分かぼす旬入り宣言日」を設定し、果汁量の多い良質な「大分かぼす」を消費者に提供するように取り組んでおり、地元市場で行われる「大分かぼす旬入り宣言式」は地元メディアで大きく取り上げられるなど、「大分かぼす」はまさに大分県の顔とも言える特産品となっている。


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