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東根さくらんぼ

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果樹王国ひがしねのスター「佐藤錦」

今回は、山形県東根市の味わい、見た目ともに最高品種といわれる「佐藤錦」を主要品種とする「東根さくらんぼ」をご紹介します。

東根さくらんぼの歴史

さくらんぼは、トルコ原産のバラ科の植物で、ヨーロッパの地中海沿岸やアメリカ西海岸で多く作られています。日本へは、明治の初めころにヨーロッパやアメリカから導入され、全国に苗木が配布されました。山形県でもこのころ植え付けされたようです。明治のはじめごろ、明治政府は欧米から輸入した桜桃(さくらんぼ)を全国20県に配布し、栽培を試みましたが、収穫期が日本特有の梅雨と重なることから、ことごとく栽培に失敗したため、さくらんぼは山形県内で細々と試作されるにとどまっていました。

東根市三日町に生まれた佐藤栄助氏は、大正元(1912)年、甘いが果肉が柔らかく保存の利かない「黄玉(きだま)」と、酸味は強いが果肉が硬く日持する「ナポレオン」を交配しました。その後も研究と育成を重ね、大正11(1922)年に初結実に至ります。そして、大正13(1924)年に「食味も日持ちもよくて、育てやすい」特性を有し、食味と外観が最も良いものを選別し「原木」としました。氏の友人である現・(株)天香園(苗木商)の初代・岡田東作氏はこの新品種の将来性を見抜き、昭和3(1928)年に佐藤栄助氏の名を取って「佐藤錦」と命名し、世に送り出しました。努力と研究によりさくらんぼを代表する品種に成長、普及させました。新品種の育成からおよそ100年。「さくらんぼの王様」として君臨する「佐藤錦」が、今日の「果樹王国ひがしね」の大きな礎を築いたのです。またその功績をたたえ、平成30年3月、両氏に「名誉市民」の称号が贈られることが決定しました。

明治時代からの栽培の歴史において、先人たちの弛まぬ努力、栽培意欲、そしてその信念は現在も地域の生産者に引き継がれており、現在に至るまで約90年間生産を継続しており、東根さくらんぼの生産量は日本一を誇り、その8割以上が「佐藤錦」となっています。 地域内では、生産者独自の研究会や勉強会、最新の栽培技術導入に向けた情報収集など、さらなる高みを目指しています。

東根さくらんぼの特徴

「東根さくらんぼ」の対象品種は、「佐藤錦」と「紅秀峰」です。なかでも「佐藤錦」は、見た目・味わいともに最高品種といわれ、さわやかな甘さとほどよい酸味のバランスに優れた食味の良さから、初夏を代表する味覚として贈答用の需要も多く、高い評価を得ています。佐藤錦は、東根市を発祥の地とし、昭和3年に命名され、世に出されました。以来、先人の努力と研さんにより栽培技術の確立が進み、今日に至っています。さらに佐藤錦の栽培技術は、後に開発された紅秀峰をはじめとする、さくらんぼの品種全般にわたる品質と生産量の向上に大きく貢献しており、東根市は全国1位のさくらんぼ生産量を誇っています。

「東根さくらんぼ」は、味わい、見た目ともに最高品種といわれる「佐藤錦」を主要品種とする、食味にも優れた赤い果実であり、山形県東根市を代表するバラ科サクラ属の桜桃(オウトウ)の果実である。 東根市は「佐藤錦」発祥の地であり、誕生以来、当地で試行錯誤を繰り返しながら栽培技術を確立してきた。「東根さくらんぼ」は長い栽培の歴史を有し、佐藤錦の栽培技術の確立を通じ、さくらんぼ全ての品種において品質が飛躍的に向上し、高品質で安定した生産量が確保できるようになりました。大玉で糖度が高く、そのさわやかな甘さと程よい酸味のバランスに優れた食味の良さが、初夏の味覚として贈答用をはじめ需要者に高い評価を得ています。

山形県のさくらんぼ栽培面積は、約3,000haで全国一を誇り、このうち、約7割を「佐藤錦」が占めています。現在では、さくらんぼのトップブランドとなった「佐藤錦」ですが、昭和50年代までは、主に果肉が固く収量の多い「ナポレオン」が加工用として栽培されており、雨による実割れが多い「佐藤錦」は、生食向けに一部で栽培されるのみでした。東根市を含む山形県は、収穫期となる梅雨時の降雨が少ない地域とされていますが、それでも雨による実割れは避けられないため、赤く熟す前の「黄色いさくらんぼ」の状態での収穫を余儀なくされていました。

しかしその後、市内の生産者の創意工夫により、パイプハウスの屋根部分をビニールで被覆する「雨除けハウス」が開発され、昭和60年代に入り普及すると、実が完全に熟するまで収穫期をのばせるようになり、佐藤錦が本来持つ「ルビー」に例えられる深く美しい赤色と、上品な甘さ、酸味のバランスに優れた食味が出せるようになりました。こうして、生食用として高い評価を得るようになった佐藤錦への改植や新植が進み、現在の地位を築いたのです。

山形県主催の「さくらんぼ品評会」では毎年東根市産が上位を占め、平成23年~27年では、最高賞の農林水産大臣賞を2度受賞し、東北農政局長賞を4度受賞しています。さくらんぼの生産量は、山形県が全国の7割を占め、東根市はその中でもトップです。

東根さくらんぼの栽培について

「東根さくらんぼ」の栽培にあたっての基準は、次の事項に努めるものとしています。

  1. ① 植栽本数は、園地10アールあたり10〜15本ほどとする。
  2. ② 割果を防止するため、雨除け施設などを用いて栽培する。
  3. ③ 野鳥等から果実を守るため、雨除け施設などの側面に防鳥ネットを張る。
  4. ④ 果実の着色を促進するため、樹の下に反射シートなどを敷設する。
  5. ⑤ 果実の肥大を促進するため、摘芽・摘果・摘葉を行う。

「東根さくらんぼ」の出荷規格は、「秀・L」以上とし、出荷規格を満たさないものは、「東根さくらんぼ」として出荷できません。

東根さくらんぼの普及について

「東根さくらんぼ」の主力品種「佐藤錦」は東根市で生み出され世に広められたが、当時より栽培意欲が高く、研究熱心で品質向上に努力を惜しまない生産者が多く、生産技術の向上や品質の安定化に努めてきたこともあり、高品質のさくらんぼを広く提供できるようになりました。さらに、東根市で開発された雨除け施設が導入され安定生産が保障されたことにより、急速に佐藤錦の栽培が拡張され、全国区の知名度を誇るようになりました。

また現在のようになるまでには、首都圏や主要市場でのプロモーション活動や営業、トップセールス、各種イベントの実施など農業関係団体や行政など地域を挙げた取り組みも大きく貢献しています。現在でも加温ハウス等設備の拡充、栽培技術指導などハード、ソフト両面からの支援がなされているほか、若手生産者で構成される「東根市果樹研究連合会」等が技術の研鑽を積む等、市を挙げてさらなる品質向上に努めています。

さらに、東根市では、さくらんぼにこだわったまちづくりに取り組んでおり、JRの駅には「さくらんぼ東根駅」をはじめ、市内のいたるところで「さくらんぼ」を冠した施設があります。また、参加ランナーが1万人を超え、東北最大級、全国屈指の「さくらんぼマラソン大会」や「さくらんぼ種飛ばし大会」等も東根市を代表するイベントとなっています。

このように「東根さくらんぼ」の特性である品質と社会的評価は、さくらんぼ栽培に適した東根市の環境条件、東根市の生産農家の品質向上に向けた長い間の取組み及び東根市をはじめとした地域全体のさくらんぼによる町おこしの取組みによるところが大きいと言えます。


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