width=

八女伝統本玉露

 width=

全国茶品評会において農林水産大臣賞6年連続受賞の「玉露」

今回は、「玉露」生産量、品質でも全国トップを誇る「日本一の玉露の産地」、福岡県八女市の「八女伝統本玉露」をご紹介します。

八女伝統本玉露の歴史

約600年前、応永30年 (1423年)に、明から帰国した栄林周瑞禅師が黒木町の霊巌寺を建立するとともに 明式(釜炒り)茶の栽培・喫茶法を地元の庄屋 松尾太郎五郎久家に伝えたのを始まりとしています。その後 長らく釜炒り茶や炙り茶(日光や火で焙り乾燥させる方法)が八女地区では作られていました。

八女茶の生産は、1820~1840年頃に山間部全域に広がって行きました。八女茶発祥時の茶種は「煎茶」が主流でしたが、当該地域が玉露生産に適していることが判明し、明治37年(1904年)頃から本格的に玉露生産が(旧)八女郡星野村(現:八女市星野村)において本格的に始まり、その後、周辺中山間地域に波及して行きました。

現在のように高級茶の産地として 蒸し製の緑茶を本格的に作るようになったのは大正末期からです。大正14年 (1925年) に八女郡福島町 (現在の八女市本町 福島小学校) で行われた物産共進会・茶の全国品評会の部の席で 当時の福岡県茶業組合理事長 許斐久吉 (このみひさきち) が 釜炒り製や蒸製の茶が混在し 「筑後茶」「笠原茶」「星野茶」など複数の地域名で呼ばれていた郡産茶を改良された高品質の蒸製緑茶から「八女茶」と統一するよう組合員に提唱し、 満場一致で可決されました。

平成になり、昔ながらの伝統的手法で生産される玉露は減少傾向にありました。そこで、平成6年度に省力的に生産される玉露の中で、一般的な玉露と区別して高付加価値化を図るため、市場(JA全農ふくれん茶取引センター)の取引の茶種区分に新たに「伝統本玉露」を設定しました。

このような歴史を経て、天然資材による被覆や自然仕立て、手摘み作業といった「八女伝統本玉露」の生産方法を、本格生産から現在に至る110年間以上、守り受け継いでいます。

八女伝統本玉露の特徴

原料の生葉は新芽が1、2枚出たときから、稲わらやすまき等の天然資材による被覆を行うため、化学繊維資材による被覆に比べ、被覆内の温湿度環境が茶芽の生育に好適であり、かつ、「自然仕立て」により茶芽の一つ一つに十分な養分が送られるため、生葉外観は、鮮緑色かつ艶が生まれます。一般的な玉露は、茶葉を摘む収穫面を半球状にする「弧状仕立て」であるのに対して、「自然仕立て」とは自然の茶の樹姿を生かした仕立て法です。また、「手摘み」にすることで、新芽の柔らかい部分のみを均等に収穫することができ、新芽の大きさが均一化されています。

生葉を産地の製茶工場で一次加工したものを「荒茶」と言い、その荒茶を再製加工し、外観や香味を整えて商品として完成した茶が「仕上げ茶(=八女伝統本玉露)」です。この「荒茶」「仕上げ茶」の外観は、鮮緑色で艶があり、細くよれ、繊細かつ上品さを醸し出しています。香気は、「覆い香」と言われる、特有の青海苔様の香りを呈する香気成分ジメチルスルフィド (DMS) の含有量が高く、非常に香り豊かです。「伝統本玉露」の香気成分ジメチルスルフィド (DMS) の含有量は、同産地の煎茶、玉露と比べ非常に多く、煎茶の5倍以上、玉露の約2倍あります。味は、旨味成分であるテアニン等のアミノ酸を多く含み、渋味を呈する成分であるカテキン類の含有量が抑制されています。そのため、浸出液の味は濃厚、「まろやか」で「こく」があります。「伝統本玉露」のアミノ酸含有量は、同産地の煎茶と比べ約4割多く、玉露と比べても約1割多いです。一方、「伝統本玉露」のカテキン類は、同産地の煎茶と比べ3割程度少なく、玉露と比べ1割程度少ないです。

八女伝統本玉露の生産について

玉露はもともと日射量の少ない山間の畑で、あえて茶樹の枝を剪定しない「自然仕立て」で栽培されます。茶樹にあたる日光を避けるために茶園全体に覆いをかぶせるのが特徴です。これによって緑茶の旨み成分であるテアニン(アミノ酸の一種)を増加させ、特有のとろりとした甘みが生み出されます。八女では新芽が1葉出たら、新芽を傷つけることがないよう茶畑をすっぽりと覆う棚に藁で編んだ「すまき」を広げていきます。現在、ほとんどの他の栽培地では化学繊維で被覆しているのに対し、あえて手のかかる伝統的な方法にこだわるのは、化学繊維だとどうしても畑の温度が高くなり過ぎるからです。また、藁は新芽の呼吸を感じ取り、湿度を調整する役割も果たしてくれます。ちなみに日本全国の茶の産地のなかでも、藁ですまきをつくるのは八女だけで、藁をすまきに編む機械は、もはや八女にしか存在しません。遮光率85%から始め、摘む前の10日は茶葉の微妙な変化を見極め、気温や天候を考慮しながら棚の上に徐々に藁をまいて、最終的には98%まで遮光します。光を遮ることで養分がてん流して、芽がゆっくりと育ちます。新芽が上へ上へと成長しようとする自然の生命力が、旨みの源となります。

 時が満ち、摘み採りの日には、大変な手間と労力、愛情を注がれて育った玉露は、その摘み方も特別です。葉が4、5枚開いた頃に、上の方の1つの芯と2枚の葉の状態の部分だけを摘む「一芯二葉」は、手摘みでなければできません。また実際に摘む際には茎の裏を指の腹で、静かに折れるまでゆっくりと曲げていき、丁寧に竹籠に入れます。極上の玉露では形の良さも大切な要素だからです。摘まれた生葉は、葉の成分がそれ以上変化しないよう、酵素などの働きを止めるために蒸しあげられます。最適の状態に持っていくためには、蒸気の量など微妙な調整が必要で、ここでも経験と勘が問われます。蒸しあがった茶葉は、熟練の職人によって解きほぐされ、揉まれ、最後に美しい針状に伸ばされます。このようにして「荒茶」加工工程は、荒茶加工技術の基礎となる「手もみ」で技術研鑽を行った加工者が製茶機械操作を担当することにより、生葉の品質を維持した高品質な荒茶が生産されます。

上記のような工程により製茶された「荒茶(八女伝統本玉露荒茶)」のみを原料として、福岡県内の仕上げ加工機械を有する加工場で仕上げ加工したもが「仕上げ茶」です。「仕上げ茶」が最終製品としての「八女伝統本玉露」です。

八女伝統本玉露の普及について

年に一度開催される全国お茶まつり内にて行われる全国茶品評会の「玉露の部」において八女産の玉露が第68回から第73回まで農林水産大臣賞を受賞、玉露の「産地賞」は19年連続で受賞しています(※第74回は2020年8月25日~28日に開催します。)。2016年、2019年の日本茶AWARDでは日本茶大賞(2020年は中止。)を受賞しました。

 玉露の栽培は大変多くの手がかかるうえに、高度な技術と長年にわたる経験や勘などが要求されるため、産地は年々減少の一途をたどっています。そうした中で八女は生産量で全国の50%以上を占め、品質でも全国トップを誇る名実ともに「日本一の玉露の産地」です。

 また、海外進出を目指して、さまざまな機会を通して、「八女茶国際ティーセッション」などを多く開催して、海外の人達にも知ってもらう場を増やしています。


関連記事

投稿は見つかりませんでした