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エスペック株式会社<GNT100(グローバルニッチトップ100)インタビュー>

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インタビュー:東京大学広告研究会
記事作成:東京大学広告研究会

創業の精神“プログレッシブ(進取的)”を受け継いで

〜2013年度に引き続き2020年度の”GNT企業100選”も連続受賞〜
エスペック株式会社は1947年に理化学器械の製造を目的として創業され、1960年に現在の主力事業である“環境試験器”に着手しました。2021年現在、世界50カ国45社に販売ネットワークを設けており、環境試験器においては国内シェア60%超、世界シェア30%超と、環境試験器のトップブランド企業となっています。
そして、創業から67年目にあたる2014年と創業から73年目にあたる2020年には、経済産業省が認定する『グローバルニッチトップ企業100選』に選出されました。

自動車やスマートフォン、そして航空機といった機械が故障することなくあらゆる環境に耐えうるのはなぜでしょうか。それは、あらゆる気象条件を再現した「環境試験」を行っているためです。私たちが日々送っている便利で快適な生活を支えている“環境試験”を開発・製造し、国内外においてトップシェアを誇る業界のリーディングカンパニーであるエスペック株式会社の代表取締役社長 石田 雅昭 様に取材させて頂きました。

新しい技術の実用化に向けての関門

環境試験

―――”環境試験器”とは

環境試験器とは、色々な温度、湿度や気圧など、基本的な気象環境に関わる因子を人工的に作り上げて、そのような環境の中で先端技術の商品を試験して実用に耐えるかどうかを確認する装置のことです。即ち新しい技術の実用化に向けての関門ということです。

環境試験に着目した経緯

―――理化学器械から現在の環境試験器へと事業内容を転換した理由とは

ちょうど戦後、創業してから昭和30年代前半まではフラスコなどを留める器具や理化学器械を作っていました。当時の先代の方々が大阪の納入先のお客様から環境試験器のニーズをキャッチしたことに発端を持ちます。当時は日本の家電産業が出てきたばかりであり、国内に適切な環境試験器がありませんでした。そのため、お客様はアメリカから輸入したり自作したりと苦労を重ねていたそうです。このような背景から、「我々でもできるのではないか」と考え、開発・製造を始めました。

環境に配慮した製品づくり

―――国内初の低GWP冷媒を搭載した環境試験器の開発の経緯について

弊社における技術開発の重点事項は、環境創造技術の開発です。環境創造技術とは人工的に温度・湿度・気圧・光などといった環境を作り上げる技術で、我々のコア技術です。

ここ2,30年は環境問題に対する社会ニーズが非常に重視されています。この部分については、過去から早くそして感度よくスタートすることができています。現在では、フロンガスは温暖化の原因として問題視されていますが、30年前まではフロンガスによるオゾン層の破壊が問題になっていました。そのためオゾン層の破壊係数を抑えた装置を日本で初めて開発しました。また、2011年の東日本大震災直後は省エネの気風が非常に高まっていたため、特に2010年代は省エネを眼目に主力製品をほとんどモデルチェンジしました。
弊社は環境に配慮した開発に以前から取り組んでいましたので、低GWP冷媒の搭載についてもいち早く開発に着手できるという環境がありました。

他社との差異

―――他社と比較してのエスペックの環境試験器の強みとは

他社と比べた時の強みは、新しいニーズにいち早く応えることができるという点にあると考えています。元々、弊社の環境試験器は耐久性・性能が非常に高いです。しかし、特にここ10年では新たなニーズが多く、規格化されたカタログ商品だけでは対応することができません。そのためカタログ製品に改造を加えたり、場合によってはゼロからお客様から色々な要求を伺って共同開発をしたりする必要があります。
それを可能とするのが弊社の強みだと思っています。

技術の応用

環境試験技術の応用―低酸素トレーニング

―――「低酸素トレーニング」とは

弊社は以前からアスリート向けの低酸素トレーニング装置の開発を進めていました。実際に2001年、2002年には弊社のトレーニング装置を使用した水泳選手が良い成績を収められたり、先日の2020東京オリンピックでも使われたりしています。
加えて、アスリート用だけでなく一般の方々向けの低酸素トレーニング装置も一部納入しています。現段階で要望がたくさんあるわけではないのですが、アスリート向けとのスペックの差を踏まえ経験や実績を積みながら積極的に取り組んでいます。

環境因子再現技術を応用した食品栽培―植物工場

―――環境因子再現技術の食品への応用について

弊社はLED電気をエネルギー源とし閉空間で植物を育成する植物工場というものを手がけています。植物工場を手がけるようになったのは1990年代で、日本の植物工場メーカーでは弊社が一番古いと認識しております。
運用上の問題として、生産品のコストが高いということがあります。自然栽培に比べて電気を使うため、当然かかるコストは高くなってきます。こういった問題に対して我々は二つの対策を講じています。
一つ目としては、低コスト化です。LEDライトを使用することによってランニングコストを抑えつつ、省エネ化を図っています。さらに自動化を進めるなど省力化を図る装置もあります。
もう一つは生産品の高付加価値化です。現在、規模は大きくないものの羽田空港の近くに植物工場を持っています。そこで作っている野菜は”海洋深層水”という海の底の水をくみ上げたものを使用しており、栽培の最後に撒くと葉物野菜のミネラルが豊富になります。他にも、低カリウムレタスを人工的に栽培する植物工場を提供しています。カリウムが多く含まれた生野菜を食べることを制限されている方でも、安心して美味しい野菜を食べることができます。このような植物工場でしか生産することのできない、付加価値の高い野菜を作ることのできる装置を販売しています。

―――今後の展開は?

現状、技術的には葉物野菜が中心となっていますが、いちごなどの果物といったような違う品種・品目を栽培できるようになると日本中でますます導入される可能性が高まると考えています。

厳密な温度管理ができるからこそ為せるワクチン保存技術

―――新型コロナワクチンコールドチェーンソリューションに着手した理由とは

コロナウイルスワクチン接種が始まる前から低温、特にマイナス温度での医薬品輸送の保管については我々のビジネスとして興味を持っており、一部開発を進めていました。単にマイナス20℃で保管するだけであれば、それを可能とするメーカーは世の中にたくさんあります。ですが、ここで取り扱うのは薬なので、当然政府が定めた厳密なガイドラインがあります。
同様に我々が取り扱っている環境試験器は試験器の精度を確保するために校正や年一回の性能チェックなどといったように厳密な管理が求められます。単に温度を下げるだけであれば我々よりも安く大量にできる企業はありますが、厳密な温度管理が必要なものであれば我々の強みが活かせると考えました。

長く、広く世界に

グローバルでトップ

―――海外で成功している秘訣とは

冒頭で申し上げた通り、昭和30年代、お客様は環境試験器を海外から輸入されていました。弊社の製品が輸入品に比べてより良い製品であることを理解していただくために海外に持ち出して海外で評価を受けようと考えたのがグローバル進出のきっかけです。さらに1985年のプラザ合意で為替が大きく動いた時期に日本の製造業、エレクトロニクス、自動車産業が急激に海外展開したことをきっかけとして現地の日系のお客様向けに装置を提供し、同時に校正やメンテナンスを行う体制を整えたことがグローバル化推進の追い風となりました。

オープンイノベーションについて

―――産学官連携をはじめ、オープンイノベーションを促進する理由とは

基本的に我々のビジネスは創業から環境試験器事業への転換、そして今に至るまでを含め、お客様に育ててもらっているということが一番大きな要素となっています。お客様に情報を頂きながら共同開発したりお客様の要望に応えたりするということを基軸に様々な商品開発をしてきました。
特に、今年開設した全天候型試験ラボでは色んな環境因子を設定することができ、様々な気象条件を実現することができます。しかし実際には、開発段階では”お客様にどのように使ってもらうか”についてはあまり理解できていないというのが現状です。そこで逆に、「エスペックはこんなことができますよ」と門戸を開くことによってお客様から「こんなことに使えないかな、こんなことに使いたいのだけどどうですか」などといった相談をしてもらえるようになると考えました。『気象環境について相談するならエスペック』といった状態になることが我々の狙いです。オープンイノベーションを図ることで外部との連携ができ、新しい技術、ビジネスを作っていくことができるのです。

M&A戦略

―――M&A戦略について

基本的にM&Aで重視していることは、相乗効果を生む企業を買収していくということです。具体的には、環境に関わる技術を持った会社を中心に買収をしてきました。実際に7月に加わった会社も環境に関わる技術を持っていました。

―――M&A後のPMI(経営統合作業)において重要視していることは

買収先の企業にもそれぞれの企業文化が当然存在するため、重要なことはお互いの企業文化を尊重しつつ、エスペックはこうですという方向性に関しては臆せず要求し、統合していくということです。実際に買収先のアメリカの会社では、現地にいる経営者が重要だと考え、すでに設立していた米国子会社の社長が社長を兼任しています。

創業74年の歴史

―――会社を長く続ける秘訣とは

来年度(2022年度)で創業から75年が経ちますが、やはりこれだけ会社を存続できているのは創業からの精神を現在に至るまで引き継いでいるからだと思います。企業は社会の公器であり、お客様の役に立ってこそ存在意義があると考えています。一方で事業や商品は時代によって変えていくことが必要であり、過去と同じものに投資するのではなく、お客様の要望なり社会のニーズに対して革新的に合わせていくことが重要とも考えています。

―――社会貢献が先か利益優先か。

理想論で言えば、社会に貢献しているうちに後から利益がついてくるという構造が理想です。ですが当然従業員や株主のことも考えれば利益は非常に重要な要素となってくるわけで、そのため全てのいわゆるステークホルダーに対してバランスが取れるような経営を意識しています。

『GNT企業100選』を二回連続受賞

―――「GNT(グローバルニッチトップ)企業100選」二度受賞の秘訣とは

環境試験器は世界的に見ても市場が小さくニッチな分野と言えます。さらにグローバルシェア30%を獲得していることもあり、まさにGNT100の趣旨に合致していると考えます。今後もますます海外を含めた展開は必要ですし、ニッチな分野を如何に深堀りするか、または周辺に広げていくか、経営としてはそれらを十分に考えながら進めていきたいと考えています。

―――GNT企業に選定されたことによる恩恵は

企業にとって一つの評価の結果だと感じています。GNT企業として選定・表彰された後には株主や報道機関から評価されることも多く、非常に有意義な受賞となりました。

今後の戦略

基本的には今の既存のビジネスを海外展開含め新しいニーズに対応しながら深堀りすることと、事業範囲の拡大を進めたいと考えています。医薬品の輸送といったロジスティクスの分野や植物工場など、環境の精密制御が有効な分野がいくつかあるためそういったところに向けても新しくチャレンジしていきます。

<GNT100インタビューのおわりに>

今回、この記事では”環境試験器”という日常生活上であまり馴染みのない機械を開発・製造しているエスペック株式会社を取り上げました。この記事を通して、私たちが普段利用しているスマートフォンや車、航空機など様々な製品を安全に、かつ快適に利用することができるのはエスペック株式会社が行っている“環境試験”のおかげであることがご理解いただけたかと思います。
また、創業から74年経つ今でもグローバルにかつ幅広い分野で活躍・挑戦され続ける姿が見えました。
今後の動向にぜひ注目しましょう。


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