width=

吉川ナス

 width=

栽培歴史が古い、≪伝統のさばえ野菜≫の一品

今回は、福井県の中央に位置する鯖江市の伝統野菜「吉川ナス」をご紹介します。

吉川ナスの歴史

鯖江市には大小いくつもの河川が流れおり、肥沃な土砂が堆積した農地が広がっています。吉川ナスは、1000年以上の歴史があるといわれ、昭和17~18年頃には、鯖江市の旧吉川村一帯を中心盛んに作られてきました。しかし、吉川ナスの栽培には高度な技術が必要で、種の自主確保の難しさがあり、また、ライバルとして、品種改良された多収型ナスが登場したことにより、徐々に生産が減少しました。

10年ほど前には加藤武雄さん澄子さんご夫妻だけが唯一の栽培農家でしたが、2009年に種を受け継いだ有志10名が「鯖江市伝統野菜等栽培研究会」を立ち上げて栽培を始めました。現在では15軒の農家が栽培に取り組み、年間約1万個以上が出荷されるようになりました。

この吉川ナスは、京都の「賀茂ナス」とは類縁系統にあるといわれ、その名前の由来は、丸ナスの品種の分系「吉川(きっかわ)」から来ている、もしくは、旧吉川村で栽培されていたことからきていると言われています。

吉川ナスの特徴

大きさは直径10cm程のソフトボールくらいで、300グラムほどの重さがあります。黒々と艶のあるその姿は「黒い宝石」と呼ばれています。綺麗な球形の物から、少し巾着っぽい形のものまであります。果肉は固めで締りがあり、緻密で煮た時にも煮崩れしにくいのが特徴です。油との相性が良く、田楽等に適していますが、煮物や漬物にも使われます。果実の色は黒紫色で、光沢が良いです。
鯖江市の旧吉川村一帯(現在の川去町、田村町付近)を中心に作られてきた楕円~やや巾着型の丸ナスで、肉質がよく締まっている緻密なナスです。外皮が薄いため、果実に傷がつきやすく、現在ではハウス栽培を主としています。また、水分量が多いため、火を通すととろみのある食感が生まれます。果実の色は黒紫色で、光沢がよく、ヘタの部分には鋭いトゲがあります。大きさは、直径10cm程度で約300g(ソフトボールほどの大きさ)の重量であります。味が濃く、大果で独特の形をしていることから、市内外の料亭や高級レストランで使用されています。

吉川ナスの栽培について

7 月~10 月出荷のナスは一般的に露地物が中心ですが、吉川なすは栽培が難しいため、ハウス栽培が基本として生産されています。少数精鋭の熟練農家が生産しており、また組織化されることで品質、数量が安定しています。栽培歴史が古く、≪伝統のふくい野菜≫の一品です。商品の出荷に関して厳しい品質検査が行われています。「鯖江市伝統野菜等栽培研究会」に所属する農家のみが生産し、種取りから土作り、苗作り等を共同で行っています。また定期的に整枝・剪定・施肥等の栽培講習会を開催し、共通の栽培指針に基づき、会員皆が同じ方法で栽培し、同じ品質のナスが出荷できるように努めています。収穫されたナスは、厳しい出荷規格に基づき、形・重さ・色等一つひとつ検査を受けて出荷されています。

栽培には、水やりと施肥の管理も大事ですが、何よりも「葉かき」と「芯とめ」が大切で、生育に余分な葉を取り除き、収穫後には枝を切り戻すという作業を常に繰り返されています。秋以降にも吉川ナスを育てるために、抑制栽培に取り組む農家さんもおられましたが、勉強と栽培技術が向上されたことで、春に植えた吉川ナスを冬まで育てることができるようになりました。(*抑制栽培:作物の自然の生育・成熟の時期を、人工的に抑制して生産・出荷の時期を遅らせる栽培方法 大辞林第三版より)

市場関係者からは「少数精鋭の熟練農家が生産、また組織化されることで品質、数量が安定しており、商品の出荷に関して厳しい品質検査が行われている。また、多くの料理人から、ナスの種が小さくて煮崩れしないと喜ばれており、一般に地場野菜で出荷されている丸ナスと比べ、2倍以上の高値がつく。」などと評価されています。栽培方法として、定植は、4月下旬より開始し、生育の過程で、一番花から下2本の側枝を残して、その下の側枝は早めに掻き取ります。主枝を含め3~4本仕立てとし、1本あたりの樹勢が強く図られるように栽培を行うため、大果なナスに成長します。また、年間の収穫量は、1本の木から40個程度で、通常の品種改良されてきた多収型のナスと比べ半分以下です。

吉川ナスの普及について

「道の駅」等、直売で超人気になっており、加工品(バーガー)も好評です。地元の学校給食で毎年、利用されています。多くの料理人から、ナスの種が小さくて煮崩れしないと喜ばれています。地元では昔から煮物、漬物の材料として重宝されています。一般に地場野菜で出荷されている丸ナスは、1 玉30~50円位の価格で推移、吉川ナスは1玉100円以上の高値で取引されています。
「吉川ナス」が高値で取引されているのは、外皮が薄く、肉質が締まっているという特性に加え、味が濃く大果で独特の形をしていることなど他ナスとの品質の違いによる差別化が図られていることや、県内外での販売PR、地域を挙げてブランド価値向上に努めてきたことに起因すると考えられています。


関連記事