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世界を見据えて誕生したメイド・イン・ジャパン「みやぎサーモン」

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未曾有の震災から復興すべくオール宮城でブランディングする「みやぎサーモン」は、養殖ギンザケの最大の特徴である「新鮮で刺身で食べられるサケ」にこだわった高品質、高鮮度な生食用のサケです。今回は、みやぎサーモンの魅力と誕生秘話について、みやぎ銀ざけ振興協議会 常務理事 立花洋之様にお話しを伺いました。

みやぎサーモンの魅力

みやぎサーモンの魅力は、何といっても、宮城の銀鮭本来の美味しさを保つために、水揚げ直後に鮮度保持処理を施すことで、生で美味しく食べられるその希少性にあると思います。「活け締め」、「神経締め」と呼ばれる特別な処理で、最高級の生食用のサケとして世界を見据えたブランディングのために、みやぎサーモンの作り手さんたちは、さまざまな取り組みをしています。

銀鮭養殖発祥の地

宮城県は銀鮭養殖発祥の地であり、現在も国内の養殖銀鮭生産量の85%を占めています。ここまで銀鮭養殖が盛んな理由はいくつかあります。

例えば、

  1. 沿岸が水深が深く、穏やかなリアス式海岸であること
  2. 水温があまり上がらないこと 銀鮭は高水温に弱いのですが、宮城県の場合は7月末まで海水温が20℃以下と水温があまり上がりません。
  3. 養魚場と沿岸までの距離が短いこと 宮城県には蔵王連峰の雪解け水を利用した稚魚の養魚場が数多くあり、稚魚はそこで育てられます。その後、沿岸まで運ぶのですが、沿岸までの距離が短いので、稚魚にストレスをかけずに沿岸まで運ぶことができるのです。

これらの理由により、銀鮭へのストレスが少なく、銀鮭養殖に適しているのではないかと思っています。

宮城県においては従来から養殖銀鮭を生で食する習慣がありましたが、1990年代から生餌をEP(人工配合)飼料に切り替えるとともに、活け締めによる鮮度保持技術を向上させ、生食に特化した養殖銀鮭の生産に取り組んできました。それによって、高品質・高鮮度な“みやぎサーモン”が誕生しました。

鮮度にこだわった最高級の生食用サケ

基本的には生食用をメインに展開しています。みやぎサーモンはとにかく鮮度にこだわったもんですから、やはり生で食べていただくのが一番の食べ方になりますね。 それに加えて、最近では宮城の農業・林業とタッグを組んで、餌として宮城県産の米粉を食べて育ったみやぎサーモンを、同じく宮城県産の栗チップを使ってスモークをした、オール宮城のスモークサーモンを開発しました。

輸入サーモンに勝るための技術

みやぎサーモンの鮮度保持処理の特徴として、「活け締め」という処理技術があります。 これは、キリで魚の中枢神経を破壊、血抜きをしてすぐに5℃以下の海水タンクに漬け込むという技術で、これによって鮮度が非常に良くなり、美味しさを保持できるようになります。チリやノルウェーから来る輸入品との差別化を図るため、我々は生食に特化したサーモンを作ろうということで、こうした鮮度保持処理を施した“みやぎサーモン”が生まれました。 しかし、「活け締め」という技術はそれまでない技術だったので、その技術を周知することは、非常に大変でした。 今でも技術が衰えないように、そして常においしい“みやぎサーモン”を提供できるように、毎年講習会を行なっています。

オールみやぎでブランディングを目指す飼料

みやぎサーモンの飼料に関しては、前述した通り、宮城県産米の米粉を配合しています。また、海外輸出も視野に入れて、ハラールを意識してポークミールからチキンミールに変更していくようなこともしています。 将来的には、オール宮城で配合飼料を作ろうと考えています。 宮城は米どころでもありますから、県の特産を使用することで、消費者にも身近に感じていただけるのではないかなと思っています。 海外戦略においても、米=JAPANといったイメージを利用することで、JAPANブランドを意識させるということができれば嬉しいと考えています。 そして、これらの飼料は、我々が提供する決まったものを使うこと、生産方法も同じような場所、方法で行うことと決めています。 そうすることで、生産者によって味や品質が変わらないようにしています。

復興のために一致団結して短期間でGIを取得

GI登録のきっかけは震災による壊滅的な被害

2011年3月の東日本大震災で、銀鮭養殖は壊滅的な被害を受けました。翌年には生産再開にこぎつけましたが、チリ産の過剰供給や風評被害により、県産銀鮭の値段は暴落し、銀鮭そのものの存続が危ぶまれる事態になりました。そこで、銀鮭の認知度向上を図るために、GI登録に目をつけたというわけです。

GIブランド化のための統一に苦労

苦労したのは、県内全体の合意形成です。それまでは生産管理工程が個人によってまちまちだったのですが、ブランド化のためにはそういった生産工程・技術の統一をしなければなりませんでした。

どん底の危機が再興への力に

ただ、震災によって養殖業者全員がどん底にまで陥ったという危機が、一つの大きな転換期になりました。経営危機の中でGIという一つの大きな目標に向かって良いものを作っていこう、ブランド化していこうという流れが再興に繋がり、結果的に宮城銀鮭振興協議会が設立してから4年という短期間でGI登録に至りました。

「宮城の銀鮭」から鮮度が命の「みやぎサーモン」へ

宮城の銀鮭は、“宮城の銀鮭”と言い表しているのですが、それではなくて、刺身に特化して鮮度が良い「みやぎサーモン」という名前が知られるようになってきて、「みやぎサーモン」についての問い合わせや注文が来るようになりましたね。

偽造品対策としてのGI

GIの効果に関して言うと、例えば、海外進出にあたって偽物に対する対策やブランド力の維持について特別な取り組みはしていないのですが、GI登録がそういった偽物の流通防止につながっているのではないかと考えています。 価格差もありますから、海外産のものが日本産と偽って売られていることもあるとは思います。 ですが、やっぱり輸入ものとみやぎサーモンは別物になりますので。『みやぎサーモン』としてGI登録することによってそれに対抗する偽物が出しにくいのかなと。 そこはやはりGIの強みだと考えています。

PR戦略

PR戦略に関して特に方針などは無いのですが、それほどまだ全国で認知をされているわけではないので、話があればこちらから出向いて多方面にPRしていくことにしています。 例えば、2019年にはゲームの戦国BASARAとコラボをしました。 これは東京オリンピック前で、海外からたくさんの人たちが国内に来るようになりまして、そういった海外のお客さんにアピールするために、こうしたアニメやゲームとコラボをしようということになりました。反響は結構ありましたね。 さらにそういったPRがきっかけで、仙台に来るという企画の問い合わせもいくつかあったんですが、コロナの蔓延により全てを実現することはできませんでした。

海外への展開

現在は、輸出も強めていこうということで、海外のマーケティング調査なども実施しています。今はアメリカやシンガポールに輸出していますが、今後はEU圏、そして全世界に向けて輸出できるような戦略を練っているところです。 寿司ネタとしての輸出に加えて、EU圏では生食よりスモークサーモンが好まれるので、そのあたりも含めてPRしていきたいと考えております。 最近は冷凍技術もかなり高まっているので、どこの国に持って行っても鮮度が落ちない、美味しいみやぎサーモンをお届けできるかなと思っています。

未来へのビジョン

みやぎサーモンは一匹一匹活け締めをするものですから、すべてを『みやぎサーモン』にはできません。やはり宮城銀鮭の中の一部だけになります。ですから、これからみやぎサーモンの量をどんどん増やして、将来的には宮城県産の銀鮭は全てみやぎサーモンですよ、というようにできればと思っています。

参考 360LiFE 地理的表示産品情報発信サイト
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