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安心のブランド力「南郷トマト」<GIインタビュー>

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トマトの旨味といえば「甘み」が強調されることが多いと思います。しかし、トマトの旨味として、酸味も感じられるところではないでしょうか。南郷トマトは、この甘みと酸味のバランスが抜群のトマトです。
昭和37年に福島県の普及所の指導を受けて、南郷村の有志14名がトマト研究会を立ち上げ、50アールの水田転作地で稲作の代替としてトマトの試作をしたというところから南郷トマトが始まったという歴史があります。
今回は、そんな南郷トマトの魅力について、南郷トマト生産組合の組合長 小野 孝 様にお話をお聞きしました。

南郷トマトの魅力

豊かな水と恵まれた天候が生み出す宝

私たちが南郷トマトを作っている地域なのですが、冬は2メートル以上の豪雪に見舞われるような中山間地域ところです。自然の豊かな雪解け水が地下に染み込みまして、豊かな水と冷涼な気候に恵まれた点でトマトにとって非常に適している地域であるということがひとつあると思います。生活していくには大変な地域ですが、このような地域に根差した農産物があることによって、今後も地域が発展していけるのではないかという点で、南郷トマトはまさに地域にとっての宝ということで位置付けられています。

甘みと酸味が生み出す絶妙なバランス

トマト自体については、トマトは「甘い」ということがひとつの魅力として宣伝されている部分があるかと思います。秋口の南郷トマトは甘いだけではなくて酸味とのバランスが非常に優れており果肉がしっかりしていて、非常においしいです。今までトマトが苦手だった人でも、秋口の南郷トマトを食べていただくと「トマトってこんな美味しかったのか。」と感動しトマトの概念が変わるように思っていただけることがあります。

おすすめの食べ方

一般的にはトマトはそのまま食べるというよりドレッシングやマヨネーズを付けて食べるということが一般的ですが、南郷トマトは甘さと酸味のバランスに優れており、素材そのものにトマトの旨味が凝縮されています。なので、何も付けずに食べていただくと南郷トマトの魅力を一番感じていただけると思います。
ほかのバリエーションとして、家庭でお手軽にできるものとして、私でしたらカレーライスを作るときには南郷トマトを入れます。あとは、焼き肉のときに南郷トマトを焼いてチーズを乗せて食べます。

地域が及ぼす影響

南郷トマトを作っている地域は標高400m-700mで、広い地域で標高差があります。そして、昼間と夜の気温差が大きいので、それがいいトマトを作れるよう作用していると思います。あとは、先ほどお話したミネラルが豊富な豊かな水、これらが良い影響を与えて品質の良いトマトが作られていると個人的には思います。
他の地域で南郷トマトを作ろうとしても、気温や水が影響するので難しいと思います。

南郷トマト生産組合様や生産者様の取り組み

「南郷トマトまつり」

元々始まりは、JAの地域の11月の文化の日あたりに農協が収穫祭のような催しをやっていたのですが、15年くらい前に「南郷トマトまつり」というふうに名称を変えてやり始めるようになりました。
内容としては、トマトの販売や出店などを出しています。現在はコロナウイルスの影響で中止しておりますが、コロナウイルスが落ち着いた暁には再開したいと考えています。

南郷トマト研究部

南郷トマト研究部は、生産組合に所属している若手の人たちの集まりです。色々メーカーさんなどからセールスを受けたときに、こちらとしても効果があるかどうか確認したいので、そういう時に実証実験を行っています。肥料、土壌改良剤などを、比較対象を設けて実証実験を行い、その結果をトマト組合のほうにあげていただいて共有します。もし実証実験で成果があげることができれば、組合にお知らせしています。

予冷について

選果場の一部に、周囲にある雪を貯蔵しておく場所がありまして、予冷庫の冷気として循環させて夏でも12度くらいに保ちます。

J-GAPの取得

生産者の約半数がJ-GAPの取得をしております。一つは福島県産の風評被害の払しょくという理由があります。また、この先、GAPを取得した商品に消費者の需要が生じてJ-GAPがスタンダードになった場合にも備えて準備しています。
また、エコファーマーは全員取得しています。

徹底された管理体制

生産者は使用している農薬類、施肥の履歴を記帳して事務局に提出しております。これに加えて、選果場ではどの生産者がどれを生産しているかというのは把握できるようにしていす。それはなぜかというと、残量農薬の検査などに対応できるようにするためです。これらについては、必要なものだと思いますし、これからも続けていこうと思います。

生産者の増加と新規就農

生産者の増加

まず1点あるのは、トマトはJAに一元集荷して多元販売を行っているわけですが、生産者と自治体(市町村)とJAが一体感をもって生産者の増加に取り組んできたというのが大きいと思います。たとえば、昔は選果場が無かったわけですが、そうするとどうしても面積を拡大するにしてもできないですし、集出荷も自分でやるので手間がかかります。
それが、選果場ができたことを契機に生産者が増えたと聞いております。
それから、徐々に収益が上がる作物だと認知されていき、生産者が増えていきましたが、初期投資の助成金などのバックアップがあったというのも大きいと思います。

ウィンタースポーツが入り口に

新規就農される方は、Iターンの方で大部分を占めています。その方々がここを知るきっかけなのですが、今まで新規就農された方の例を辿りますと、ここは豪雪地帯でスキー場もあります。そのスキー場を定期的に利用されているような方が、地元の南郷トマトの生産者と知り合うことがあり、色々な話を生産者から聞いて足を踏み出すといったケースがあります。よく行政でやるような就農フェアなどにも参加しており、それによって知って就農される方も数名おります。
しかし、一番多いのはウィンタースポーツによって何度も訪れることによって、生活していけることを知って飛び込んで来られる方です。これに加えてUターンの方や定年退職の頃に地元の親の介護のために来られる方もいます。

南郷トマトというブランドの安心感

生産者が増える根底にあるのは、決まった量をちゃんと採って出荷すれば南郷トマトはきちんと販売される、作った分だけちゃんと売れるという安心があるというのも大きいと思います。

GIについて

地域団体商標の壁

南郷トマトと称して、南郷トマトの収穫にもなっていない時期に販売される方がいました。この対策として最初に考えたのは、登録商標化できないか、ということです。まずGIの前に地域団体商標として南郷トマトの登録を行いました。しかし、地域団体商標では不正な販売に対して自分たちで対処しなければなりません。

国が対応してくれるという魅力

これに対して、GIは取得することによって、不正に対して国で対応してもらえます。なので、非常に南郷トマトに合っていると感じました。そして、GIの要件を見ても南郷トマトはGIの要件を満たしているのではないかと思い、GI登録の申請をしました。

南郷トマト生産組合としての展望

生産開始から今年で60年を迎えますが、トマトはどうしても連作障害のある作物で、なかなか産地が何十年と続くのは珍しいことなのです。日本で作られている産地の中でもかなり長いほうだと思います。
ここで生活していくためにはトマトは必要な農産物です。それがために、生産者は全力を尽くして生産しています。この先も、新規就農者を確保しながら、100年を目指して継続できるよう、生産者、行政の方、農協と一体となって取り組んでいきたいと思います。



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