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市田柿<知的財産活用大賞インタビュー>

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知的財産活用大賞を受賞されて

弁理士会が主催する知的財産活用の意識高揚を目的として、平成26年より始まった知的財産活用表彰において、私どものJAが大賞をいただき、大変光栄なことだと感激しております。実際のところ、推薦いただきました特許事務所の先生もブランド部門で奨励賞が頂ければと思っていたところですし、過去の受賞者を拝見しても、農業分野で特にJAグループでの受賞はありませんでした。知的資産経営と言いましても、私どもに知的財産に対する知識があったわけでもなかったので大変驚いているところです。

これも弁理士の先生のアドバイスがあったからこそと感謝しております。

市田柿のブランド化と保護

当地域の特産品である市田柿は600年以上も前から栽培されてきた渋柿で、これを干し柿にして、名称を「市田柿」として販売を始めてちょうど100年を迎えました。

大正10年販売当初は、予想外に評価は低く「骨折り損」という結果でした。しかし、品質向上のために品種の優良系統選抜、他産地に出向き生産加工の研究を行い市田柿に適した生産加工技術開発などから始まり、消費拡大、認知度向上のためのPR事業を行ってきた結果、市田柿ブランドが出来上がってきました。

ブランド化により模倣品流通が始まり、歴史ある市田柿を地域の財産として守るため商標やGI登録を行ってきました。ですから、知的財産を活用すると言うより、市田柿をブランド化し、守るために実施してきたことが知的財産を活用していたという結果に繋がっていたということです。

農業分野での知的財産の活用の重要性

知的財産活用の中で、名称保護のため商標登録が周知されているかと思いますが、認知度と共に評価が高まり、いわゆるブランド化が進むにつれて模倣品が増えることは実際に経験してきたことで、長い年月をかけて育まれた物を守るためには重要と感じています。

ちょうどこの大賞を受賞する時期には、種苗法の改正が成立、施行がされ話題となりましたが、品種登録された種苗等の海外流出により発生しうる輸出先喪失を防ぎ優良品種価値の維持を行うためで、しいては農家経済を守ることにつながってきます。

またJAでは農産物の生産の技術指導も行っていますが、この技術指導の内容も長年の試験研究の結果から生まれたもので重要な知的財産に該当します。

今まで知的財産であることを認識せず、これらの技術指導内容も安易に公開していたと反省もするところです。

また、知的財産として農産物を守ることにより、その価値観の向上やブランド力の向上につながり農家所得の向上にもなると考えます。

取り組みについて

ブランド化と長年の歴史の中で育まれてきた市田柿を守るための取り組みを中心に行っています。商標権やGIなどの権利取得、その権利による権利行使、地域内で商標の使用許諾により地域全体で市田柿を守る体制を作ってきています。

市田柿の認知度向上を狙いとして取り組みの成果をプレスリリースしており、商標登録、GI登録の制度説明と権利取得を需要者に周知したことにより、模倣品販売の情報が消費者の方から入り、権利行使対応をさせていただいたこともありました。

信州大学、一般社団法人 長野県農村工業研究所が保有する「干し柿の製造方法」の特許については、試験研究時点から協力をし、独占的ライセンスの許諾を受けています。

この特許は高齢化による生産量の減少に歯止めをかけ、生産量の維持、拡大を目的として建てました市田柿加工及び集出荷施設「市田柿工房」で活用しており、生産量の維持とともに地元の雇用促進となっています。

また、販売期間延長と輸出における輸送方法を試験、検討する中で「ころ柿の長期保存方法」を特許登録しており、輸出輸送や長期販売の中での活用を計画しています。

海外でGIを取得

現在、台湾、香港で商標登録。ベトナム、シンガポール、タイでGI登録申請を行っており、シンガポール、ベトナム、マレーシアが登録済みとなっています。

市田柿は、年末需要が主となっていますが、出荷は年末から年始が一番のピークとなり、年明け価格が安定しないことが課題であったので、価格安定のために台湾、香港を中心に輸出を行ってきました。

特に干し柿は中華系の国では春節需要があるため、これらの国へ輸出拡大を進めてきました。高評価が得られている中で、実際に模倣品の販売や第三者による海外での商標登録申請もありましたので 海外でも市田柿を守るためにGI登録申請、商標登録を行ってきています。

今後、登録済みあるいは登録申請中の国以外に輸出を行うとなれば、その国でのGIまたは商標登録申請を行ってまいりたいと思っています。

ブランド力の向上

他の商品との区別をはかり、名称保護のために地域団体商標登録から始まりGI登録を行ってきました。しかし、登録を終点とせず、行政、関係機関参画による市田柿ブランド推進協議会を 設立し、地域全体で市田柿を守るという意識統一、ブランドとしての品質統一と向上、さらなる認知度向上のためのPR事業などを現在も継続していることで今の市田柿があると思っています。

市田柿だけでなく、ブランドと言われる商品はブランドの保護、ブランド力向上については終点がなく、そのものがある限りブランド維持のために継続していかなければなりません。ブランド力が向上するほどより一層強固にレベルアップを考えていかなければと思います。

栽培・加工に関するデータの活用

ビッグデータの活用と言うほどではありませんが、地元試験研究機関などと連携して行った調査で得られた情報は3000件ほどの市田柿生産者へ提供し、ブランドとしての高品質な市田柿生産に努めています。

高品質な市田柿の生産のためには、病害虫防除の徹底、適熟収穫、加工期間の乾燥管理が重要となりますが、病害虫は発生消長調査により、発生の多少や多発時期の予測による防除適期情報、標高別の熟度調査による収穫開始日目安、積み重ねた気象データと気象予測から乾燥期間での品質低下発生予測と対策などの情報提供を行っています。

特許事務所と連携について

連携している特許事務所は、弁理士業務だけでなく、知財プロデューサーとしてブランド戦略、事業創出、海外展開支援も専門としています。国内外の知的財産権の取得はもとより、知的財産の活用を中心としてブランド戦略をアドバイスいただいています。海外のGI登録にあたりましても、現地調査により制度内容等詳細に説明いただく中で登録申請まで行っていただいております。

また利き酒師、ソムリエの資格もあり、市田柿とのマッチング等相互のPR、海外展開についてもアドバイスをいただくなど、幅広いアドバイスがあり、その結果が今回の大賞に結び付いたと感謝しております。

機械乾燥法

この特許は、信州大学と長野県JAグループの研究機関である一般社団法人 長野県農村工業研究所が特許取得をしており、私どもはそれを独占的ライセンスの許諾を受けています。

干し柿は、水分量50%程度の「あんぽ柿」と水分量30%程度の「ころ柿」に分類されます。

市田柿はころ柿に属し、表面が糖の結晶である白い粉で覆われているのが特徴です。干し柿の機械乾燥はあんぽ柿では多く利用されていますが、市田柿のように小粒で表面に白い粉で覆われる干し柿の製造には適していませんでした。また、近年の温暖化により将来は自然乾燥では品質低下によるロスも多くなることが懸念されたため、研究機関2者により研究いただき、実用試験も重ねる中、この乾燥方法を特許出願し、私どものJAが利用させていただいております。

市田柿の加工からパッケージを行う施設「市田柿工房」を平成25年に建設しておりますが、この施設へ20台の乾燥庫を導入し、生産者の高齢化等による市田柿の減少が懸念される中、ブランドとして生産量の維持拡大に努めています。

また、放任柿園の解消と市田柿工房での雇用促進に貢献しているかと思います。

GIと地域団体商標

地域団体商標制度は平成18年4月より、地理的表示保護制度は平成27年6月よりそれぞれスタートしました。先ほどもお話ししましたが、模倣品の流通が多く見られたタイミングで地域団体商標制度が始まり、長野県第1号で登録を行いました。地域団体商標は名称を独占排他的に使用できるとともに、第三者の不正使用に対して訴訟を起こすことができます。しかし、不正使用の発見や訴訟は自分達で行わなければならず、このことが課題でした。また、市田柿を扱う事業者も多くなり、ブランドとして規格統一が必要でしたが、地域団体商標では規格は登録に関係なく、登録団体の任意でした。

その中でGI制度では、生産工程や規格も含め登録することから品質統一ができるとともに、不正使用に対して行政が取り締まりを行ってくれて、訴訟など自己の負担もないとのことで、地域団体商標の課題であった部分をカバーできることから、GIも長野県第1号で登録させていただきました。

地域団体商標、GIともに強み弱みを持っていますので、両制度へ登録することで補完できるようにと特許事務所のアドバイスを受けて登録しています。

知財活用による変化

市田柿を地域の財産として地域全体で守る取り組みと市田柿のブランド化、ブランド力の維持向上を目的に取り組んできた内容が、知的財産を活用した取り組みとなったわけですが、先ほども言いましたように認知度、需要者からの評価も年々上がり、市田柿ファンの増加、ブランドとして評価されてきて今の市田柿となったことが一番の変化かと思います。

特に、市田柿の認知、消費は若い人ほど低かったわけですが、若い人にも認知され、消費されるようになってきたことは大きな変化と言えます。

また「守る」という視点から見ますと、国内での模倣品の流通は減り、ほとんど見かけないようになったかと思います。ただ海外での模倣品流通などが目立つようになってきました。

良い意味でいえば、ブランドとして認知されてきたということになるかと思いますが、海外での監視、模倣品等の侵害対応などの業務が重要と感じています。

今後の知財活用のご展望

農業経営の中で知的財産が存在しており、種苗法改正による優良品種の価値維持から始まり、産品の名称保護、生産のための開発技術の保護などあらゆる面から知財として保護することにより産品の維持、保護ができ、PR活動にも活用することによりブランド化も可能と思います。

また、農業の後継者不足と言われる中、知財活用により農業が守られるようになれば、農業継承にもつながるものと考えております。

そうは言っても、何が知財にあたり、どう活用するかが私どもも認知不足なところです。そのためには、特許事務所など関係機関との連携をしっかり行い、ご指導をいただかなければできないと認識しております。

特許事務所等との更なる連携の強化をこれからも行い、農業を守るために知的財産の活用を進めていきたいと考えております。

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